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「その他二次」
スタマイ&ドラマト

全身全霊で愛してやる

 ←すっかり寒くなりました →気づけば2018年

部屋の片づけは済んだし不要なものは全て処分した。
長年使ってきたバイクも置いていく。愛着がないといえば噓になるが、所詮はモノだ。代わりはいくらでもあるし、この身ひとつでこの部屋に来た。出ていくときも同じことだ。
何もいらないし、何も残さない。
そう思い片づけたこの部屋はまるでチェックインしたてのホテルの部屋のようで、生活感も人の気配も一切感じられない。

少しは片づけましょうよ!

何度もそう言った彼女に、必要に迫られれば自分にだってできるってことを直接教えてやりたかったが、それはまあ諦めざるを得ない。
早ければ明日にでも彼らはこの部屋に来るだろう。渡した鍵の意味にあの人がいつ気づいてくれるかは微妙なところだが、それでも彼らのことだ。そう時間はかけずにあの資料にたどりつくはずだ。
そうすれば彼女の身は安全だ。彼女を狙うすべてのものを排除することは不可能だけれど、少なくとも俺の国から狙われることはなくなる。これが、今の自分にできる精一杯のことだ。

残したものはないかと、もう一度部屋をぐるりと見まわす。
キッチン、リビング、寝室、そしてバスルーム。
水滴ひとつ残していないバスタブの縁にちょこんと鎮座した黄色の物体は、彼女が、まるで嫌がらせのように置いていったバスグッズ-というか、アヒルだ、アヒル。
なんの価値もない、ただの子供のおもちゃだ。何度も捨ててやろうと思ったし、実際にゴミ箱までもっていったこともある。

だけど、捨てられなかった。

それが自分の甘さで、この先命取りになるだろう弱さだと気付いたのはいつだっただろう。
もう切欠すら覚えていないけれど、今となっては思い出す必要もない。むしろ忘れるべき項目だ、最優先事項として。
少し色あせた黄色の物体をそっとバスタブに戻す。
この部屋で過ごした時間すべてを置き去りにするように。


約束の場所まではタクシーを使った。
仮に渋滞に捕まったとしても、集合時間まではまだ余裕がある。
シートに深く身を沈め、見慣れた街並みをぼんやりと眺めれば、懐かしい思い出が色鮮やかに甦ってくる。

ふたりで歩いた駅からの道、後ろに彼女を乗せてバイクで走った通勤路。
パンケーキが美味しいから一緒に行こうと誘われた店は、今日も客で溢れている。
あの時は、気が向いたらそのうちなと言葉を濁したが、ほんとは休みの日にでも連れて行ってやろうと思っていたなんてことは、口が裂けたって言えやしない。

ほんとに素直じゃないですよね

何度もそう言われた。
言われるたびに「うるせえ」と素っ気なく返した。だけど、そう言われることが嬉しかったのだと、今ならわかる。
想いと裏腹なことしか口にできない、そんな自分を彼女が受け入れてくれているようで。

そうだ。
いつだって彼女は受け入れてくれていた。
憎まれ口をたたいても、それでも最後は笑顔で包んでくれた。

なのに、彼女を傷つけた。傷つけることしかできなかった。

赦されるとも思っていないし、赦してくれと言うつもりもない。
いっそ憎んでくれたってかまわない。
憎んで恨んで罵って。それでも構わないから。
願わくばどうか幸せに。
誰よりも幸せになってほしいと、心からそう思う。

できることならこの手で幸せにしてやりたかったけれど、なんて。
この期に及んでまだそんなことを思ってしまう自分はどこまで甘いんだと自嘲しながら、指示した場所に到着したタクシーを降りた。
見果てぬ夢だと感傷を振り切るように、階段を一段一段上ってゆく。
軍の基地でなく民間ビルの屋上を集合場所にした理由はわからないが、もうそんなことはどうでもいい。
早くここから立ち去りたい。

階段を上りきり無機質な非常ドアを開ければ、そこには離陸体制をとったヘリが一機。
目立たぬようにてっきり小型のヘリを使うものだと思っていたのに、タンデムローターの大型輸送ヘリはいつでも飛び立てる状態で、最後の搭乗者を待ちかねていた。
まさかこのまま本国へ戻るわけではないだろうが、沖縄あたりまでは飛ぶつもりかもしれない。そこからは非合法な手段で出国するのだろう。
入国時はきちんと手続きを踏んでいるから、今持っているパスポートは使えなくなる。
いや、使うことは金輪際ないのだと、今さらながら実感した。

これで終わりだ、なにもかも
だけど、もし
もしも、もう一度会うことがあったなら
その時は-

ローターが巻き上げる強い風に顔を顰めつつヘリへと駆けより、コクピットのパイロットに合図を送る。
徐に開いたスライドドアから貨物室に身を滑りこませ、顔なじみの海兵隊員の足元に転がる影を見たその瞬間。

Damn it!

無意識に漏れた呟き。けれど、躊躇いはなかった。


もしももう一度会えることができたなら
その時は
なにを失ったとしても後悔なんかしない
おまえだけを見て おまえだけのために
全身全霊で愛してやる


そして俺はおまえを抱えて宙を飛んだ。


*とある投稿サイトにコソッと書いてみたスタマイ今大路編だったりw

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~ Comment ~

 

アップお疲れさま〜。
予備知識なしで読んだところ、主人公はややロン毛(くせ毛)で無精ヒゲ有りのカメラマン風のイメージが出来上がったw
そのあと今大路の画像、見に行ったけどね。

アヒルにクスッとなったよ( ^ω^ )いいねアヒル。
これはうさぴょんオリジナルの描写なんだろーね。
違ったらごめんよ(>_<)

ぐりんたん 

読んでくれてありがとー!

>主人公はややロン毛(くせ毛)で無精ヒゲ有りのカメラマン風のイメージが出来上がったw

うん全然違ったねw

でも外見はともかく、中身はわりとそっち系かもしれない
素直じゃなくてSっ気あって愛情表現がわかりにくくて
まるで総司のような奴だ
総司ほどわかりにくくはないがw

>アヒルにクスッとなったよ( ^ω^ )いいねアヒル。
>これはうさぴょんオリジナルの描写なんだろーね。

ごめんなさいこれ公式です(^^)/
黄色のアヒル、出てくるんだよー

初めてインストールしたときは別のキャラが推しだったんだけど
今大路の本編読んで、不覚にも泣いた
別記事でも書いたけど、突っ込みどころは多々あれど
一番ドラマティックだったなあ

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