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「お題シリーズ-拍手御礼-」
Balladeを聴きながら

いそしぎ

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日中はうだるような暑さだが、日が昇る前のこの刻限は涼しくて、肌に触れる空気はひんやりとしている。夕暮れから飲み始め、その流れで一夜限りの女と情を交わした身にはこの冷たさが心地よく、全身に纏いつく気だるい夜の名残を消してくれるようだ。

買った女と夜を過ごしても、女が目を覚ます前に遊郭を出る。それが高杉の常だった。
次の約束をして男の背を見送ることが女の務めのようになっているが、そんなものは不要だ。

たかが一晩、行きずりに体を重ねただけの女
情など欠片もなく、互いの欲望のはけ口でしかない関係

そんな相手と後朝の別れなど必要ない。まして次の約束をするなど真っ平御免だった。
だというのに、昨夜の女は郭の戸口まで見送りに出てきた。
預けていた刀を両手に抱え、あろうことか次のお越しはなどとのたまって。
その瞬間に一気に心が冷えた。
なんで次の約束などする必要がある。約束をしたいと思うほど愉しめたわけでもないというのに。
そう口にしなかっただけましかもしれない。
思い切り顔を顰めたという自覚はあるが、顔も覚えていない、もう二度と会うことのない女だ。どう思われようと構わなかった。

じゃりっと砂利を踏みしめる音、さわさわと揺れる木々の音。
そこに微かに混じる規則正しい音に、高杉は足を止めた。
このまままっすぐ行けば屋敷へ戻ることになる。
使用人たちはそろそろ起きだし、朝の務めを始めるころだろう。
朝帰りの自分を叱責する人間など屋敷にはいないが、もしかしたらお節介な悪友が、朝から説教をしにやってくることだって考えられる。

めんどくせえな

今説教をされているわけではないのだが、うっとおしい声が聞こえてくる気がして高杉はちっと舌を打った。

だいたい、俺に遊び方を教えたのはあいつじゃねえか
俺が遊びを覚えたらこうなることはわかってただろうが
なのに説教をされる意味がわからねえ

そう言いたげに眉を寄せると、高杉はちらりと視線を脇道へと向ける。
木立の間を縫うように伸びた細い獣道がどこへ続いているのか。
何度もこの道を行き来している高杉がその答えを知らぬはずがなく、足取りに迷いはなかった。

まだ薄暗い雑木林を慌てることなく、むしろゆったりとした歩みで進んでゆく。
山の奥ならいざ知らず、町のすぐ裏手にある林の中だ。人を襲う獣はいないし、まして急ぎの用があるわけでもないのだし。
足元は相変わらず暗いものの、鬱蒼と茂る木々を見上げれば、夜通し闇を照らしていた月はもう見えず、かわりに東の空がぼんやりと色を纏い始めていた。

夜が明ける。
この時間が高杉は好きだった。
一層闇が濃くなる黎明、けれどその先には必ず陽が昇る瞬間がある。
どれほど深い夜であっても、それが気の遠くなるような長い時間であっても、明けぬ夜などない。
それを実感できるこの時間を買った女と一緒に過ごす気になどなれなかった。

雑木林を抜けた途端、濃い紫や藍色の中にぼんやりと白く浮かびあがる波頭が見えた。
ずっと聞こえていた音の正体は波の音だ。
今はまだ海と空の境界は曖昧で、あたりの景色もはっきりとはしない。
けれど夜明けとともに少しずつ、だが確かに白んでゆく空と海。
その光景はどんな宝玉よりも価値がある。それをこうして一人占めできることは至福の時といっても過言ではない。
だから、波打ち際に浮かび上がる黒い影を視界の端に捉えたとき、高杉は僅かに目を細めた。
気配に気づいたのか黒い影がこちらを振り向くと、やれやれと肩をすくめる。
けれど、まっすぐ自分に向かって駆けてくる華奢な姿を見つめるその貌には、穏やかな微苦笑が浮かんでいた。

ひとりで過ごすこの時間が好きだった。誰かとこの光景を眺めるなんて考えたこともない。

そんな思いは、まだほの暗い砂浜に寄せては返す波の音の向こうに消えてゆく。
夜明け前、まだ冷たい海風から守るように
腕の中に飛び込んできた細い体を高杉はそっと抱きしめた。


  夜明けの海砂浜

*タイトル The shadow of your smile/映画「いそしぎ」より

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~ Comment ~

NoTitle 

うさぴょんて高杉の話は幸せなの多いよねw

「ひとりで過ごすこの時間が好きだった。誰かとこの光景を眺めるなんて考えたこともない。
そんな思いは、まだほの暗い砂浜に寄せては返す波の音の向こうに消えてゆく」

↑この部分、好き!

いそしぎって映画があるんだねぇ
今Wikiで調べてみたよ。
自由な心を持った女性に惹かれる牧師!

高杉も紫苑もどっちも自由だよね。
心の赴くままに生きたって感じ。

ぐりんたん 

久々の高杉話、コメントありがとー!

>高杉の話は幸せなの多いよねw

いやあの
この先は悲しい目にあう方たちなので、ここはひとつ穏便にw

最近、「書くこと」が苦手?になってきててさ
前みたいに集中もできないし、ネタは浮かんでも文字に起こせないんだよねえ
ちと武者修行がわりに某投稿サイトでちょこちょことSSをアップしてみたりもしてたんだけど(薄桜鬼じゃなくスタマイ)
すっげーしんどかったw
でも、高杉話ならなんとか書けた!
というわけで、しばらく高杉話続くかもー

「いそしぎ」は50年以上前の映画だよん
さすがに私もリアルタイムでは見てねえ
映画そのものの評価はあんまり高くない(むしろ酷評されとる)けど
テーマ音楽は誰もが絶対一度は聞いたことがあると思う
そしてこの話のタイトルは「いそしぎ」だけど、イメージは音楽の方だったり。
時間あればまたググってみておくれ(*^_^*)
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