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「薄桜鬼 土方歳三」
甘い影(連載)

甘い影 9

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虫の音がぴたりと止んだ
けれど総司が驚くことはない
足音などに頼らなくても、近付く気配にはとっくに気づいていたし
だからといって刀を手にすることもない
そんなものは必要のない相手だとわかっているからだ

「入っていいよ」

相手が声をかける前に、総司が告げる
音もなく開いた襖から顔をのぞかせたのは、予想通り斎藤だった
寝床にごろりと横になっている総司を一瞥すると、斎藤は後手に襖を閉めた

「心配しなくていいよ。左之さんは今晩は巡察だから」

それは暗に、「隣室に人はいない」ということを告げている
斎藤は眉一つ動かさず、その場に正座した

「聞いたんでしょ?山崎くんから」

寝ころびながら金平糖を口にする総司に斎藤はわずかに眉を寄せたが、何も言わなかった
今さら総司相手に小言を言っても仕方がないことなど、充分承知している
刀を畳にそっと置くと、斎藤は両手を膝の上に乗せた

「で?相手はどこの誰だったのさ」
「聞いてどうするつもりだ」
「あれ。そう来るとは思わなかったな」

などと言いながら、総司の顔には楽し気な笑みさえ浮かんでいる
斉藤の出方など端からお見通しだったのだろう

「勿体ぶることないじゃない。どうせ話すために来たんでしょ」
「話すかどうかは、おまえの返答を聞いてから決める」
「ったく、本当にはじめくんってば真面目なんだから」

がりがりと金平糖を噛み砕くと、総司は体を起こした
口の周りについている小さな欠片を指で拭い、その指を斉藤に差し出す

「・・・なんの真似だ」
「はじめくんも欲しいかなと思って」

それはなんの冗談だと言わんがばかりに、斎藤は思いきり顔を顰めた

「あれ。いらないの」

冗談ではなく、もしかしたら本気だったのかもしれない
総司は心から残念そうな顔をして、自分の指についた甘い欠片をぺろりと舐めとった

「・・・仕方あるまい」

飄々としたその態度に、気勢をそがれたのかもしれない
諦めたように溜息をついた斉藤とは対照的に、総司はにっこりと笑いかけた


初めて会ったのは試衛館だったけれど
正直、どんな出逢いだったかは覚えていない
気付けばいつもそこにいた
人を子ども扱いして、気に入らないことがあると遠慮なく拳骨を落として
今でこそ人は彼を「鬼」と呼ぶけれど
あの頃に比べれば可愛いものだと思うほど、当時はもっとケンカっぱやかったように思う
そのくせ妙なところで正義漢というか、真っ正直というか
ケンカをする相手はいつも、自分より年上の連中だった
負けず嫌いで、意地っ張りで、大けがをして帰ってきても絶対に痛いとは言わず
どんな時でも、自分の弱みは決して見せない人だった


「そういうところ、全然かわってないよね」
「・・・あ?」

声をかけることもなく障子を開け、遠慮会釈もなく部屋に入ってきて、許可を得ることなくその場に座り込むことはいつものことだったので、今さら小言を言う気にもならなかったのだが
突然ぼそりと呟いた総司に、土方は筆を止めた

「なんだって?」
「全然、かわってないよねって言ったんだよ」
「なんの話だ」
「人のことは子ども扱いするくせにさ。自分だって全然成長してないじゃない」
「だから、何の話だって聞いてるんだよ」

人を食ったような総司の言動には慣れている
慣れてはいるが、さすがに今回は土方も眉を寄せた
総司が何を言っているのか、さっぱりわからない

「ほんっと昔っから意地っ張りで頑固なんだから」
「俺は頑固じゃねえぞ」
「あ、意地っ張りは否定しないんだ」
「って、てめえは何をしに来やがったんだ」

職務上抑えてはいるが、もともと気は短い方だ
しかも気心の知れた総司が相手とあっては、遠慮する必要もない
むっと眉間にしわを寄せる土方だったが、むろん総司はどこ吹く風だった

「みんな成長してるんだから、土方さんもそろそろ大人になりなよって話だよ」
「てめえ、俺にケンカを売りにきたのかよ」
「やだな。そんなわけないじゃない」
「いい加減にしろよ。用がないならとっとと出てけ」

さすがに堪忍袋の緒が切れたのか、土方はぎろりと総司をにらみつける
けれど総司が怯むわけはない
むしろ楽しげに笑みさえ浮かべている

「俺は忙しいんだ。さっさと出ていきやがれ」
「ねえ、土方さん」

ほんの少し。
総司の声音が変わったことに気付いた土方は、肩越しに振り返る

「僕はべつに土方さんの味方ってわけじゃないし。土方さんがどうなろうと知ったことじゃないけどさ」

相変わらずの毒舌を笑顔で振りまく総司に、土方は目を細めた

「けど、土方さんが弱みを見せてくれるなら大歓迎だからね」
「・・・何が言いたいんだてめえ」
「さあね」

総司は音もなく立ち上がり、まるで猫のようなしなやかな身のこなしで土方の傍に歩み寄る

昔は見上げるところに顔があって、いつも悔しい思いをしていた
けど今は

怪訝そうな目で自分を見上げる土方に、総司は口端を上げた

「お仕事頑張ってよね」

おまえにも仕事があるだろうが
土方がそう怒鳴りつける前に、総司はさっさと部屋を出て行った

「・・・なにをしに来やがったんだあいつは」

開けっ放しの障子の向こうから、再び鳴きだした虫の音が聞こえてくる
そんな秋の夜だった

*いっこうに話が進まねえ・・・


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~ Comment ~

 

総司楽しそうね!
そんな貴方を見れて嬉しいわ私!
口の周りに金平糖てw
どんだけガリガリやったんだよ

しかしまさか斎藤に指を突き出すとはね…
なんか新鮮な仕草だ。
こういうちょっとした行動で、まだ読んだことない総司に会えるとワーイ!\(^o^)/ってなる!

こないだ、ちとエロ系の新選組マンガ読んだんだけどさ。(無料だったから)
総司の見た目が、まんま薄桜鬼なのよ。
いや、絵の綺麗さは本物に遠く及ばないけどね。力説!
なにパクってんだよと思ったね。
私の総司を!

さてさて結局山崎は何を調べ上げたのやらw
気になる次回、だね!

アップありがとー( ´ ▽ ` )ノ

 

アップありがとです!

沖田総司が語る土方さん、好きっ♡
新撰組隊士目線の土方さんってなんか好きなんだけど、中でも沖田総司が語るのは格別だなぁ。

そしてぐりんさんの、エロ系新撰組漫画、気になる!

ぐりんたん&あーやん 

早々にコメントありがとー!
なんとか「甘い影」続きアップできた・・・
先は長いけどw

◇ぐりんたん

楽しそうな総司、堪能していただけて嬉しいよ!
総司といえば金平糖
金平糖といえば指でしょう!・・・・あれ?違う?

いやあ
斎藤との絡みは書いてても楽しくってさ
馬鹿がつくほど真面目な斎藤と
飄々としてる総司のやりとり
きっと総司はマジなんだよ、指についた金平糖w
斎藤も「すまぬな」とか言いながらさ
「あーん」って舐めちゃえばよかったのに!

山崎が何を調べたのか・・・
・・・これから考えるよ(おいw)

あと、私も気になるぞ「えろ新選組」!
こそっとタイトル教えてくれー!

◇あーやん

桂話のアップ遅れててごめんよう
でも、楽しんでもらえたみたいで良かった!

総司と副長はさ
他の隊士とは違う絆?みたいなもんがあると思ってるんだー
愛情とかとはまた違うんだけど、他の誰とも違うつながり

総司の恋物語では、副長がジャマしたからさ
今度は総司がジャマするかもw

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