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「繊月花-新撰組外伝-」
君に恋をした-桂小五郎の恋-

18 夏の終わりの水平線に

 ←真夏の夜のちょっとコワい話 →触れる

高杉が江戸に行っちまってから、俺のまわりも慌ただしくなってきた
別に高杉の尻拭いをしてるわけじゃなく
いや、あいつがいねえからってのも原因のひとつではあったけど
で、そろそろだろうなあと予想はしてたんだが、やっぱりそれは的中した

江戸へ行く
それは藩命だ
藩命ってことは逆らえねえってことで
別に逆らう気なんざなかったし、江戸へ行くのも予定のうちで
そのために高杉は先に行ったわけだし、だから驚くことでもなかった

江戸と萩を行ったり来たりってのにも慣れてる
慣れちゃあいるが、行っちまったら当分は戻ってはこれねえ
いつもならそんなことは当たり前で、気にしたこともなかったんだが
今回、こんなことを思っちまうのはやっぱり

こいつのせいなんだろうな


「染花、濡れるぞ」

波打ち際で足を濡らして喜んでいる無邪気な女
呼べば弾けるような笑顔を向けてくれる素直な女

染花はそんな女だから、上客がつくのは当たり前だったかもしれねえ
海千山千の遊女たちの中にあっちゃ、染花みたいな女は稀有な存在だ
遊び慣れた野郎どもからみりゃ新鮮で、ついつい手が出ちまうんだろう
あれよあれよという間に、染花は売れっ妓になっちまった
おかげで俺は、早い話が出入り禁止だ
初客を頼んできたのはそっちじゃねえかって文句のひとつも言いたくなったが
そこは場数を踏んでる郭の女将だ
俺みたいなのが傍にいちゃ面倒なことになるかもしれねえって察したんだろうな

もちろん揚代を払えば俺だって客は客だが、どっかの金持ちがずっと仕舞いをつけていて
俺に限らず、誰も染花を座敷に呼ぶことは出来ねえって状況で

そんな染花と会えるのはこの日だけ
染花が稽古に出る日の帰り道だけだった

お付きの禿を茶屋で待たせ、俺と染花はつかの間の逢瀬を楽しむ
何をするわけでもねえ
茶屋で団子を食べるだけのこともある
ふらりと雑木林を散歩して、とりとめのない会話を交わす
ただそれだけの時間
傾きかけた陽が沈めば、それが終わりの合図で

それでも俺にとっては、なににもかえがたい時間だった

「着物が濡れたら困るだろうが」
「大丈夫です。すぐに乾きます」

屈託なく笑う染花はまるで少女のようで
砂浜に脱ぎ捨てた草履を拾い上げながら、俺はゆっくりと染花の後を追う

「冷たくて気持ちがいいです」

ばしゃばしゃと水しぶきをあげながら、寄せては返す波と戯れるおまえ
俺にとっちゃ海なんざ珍しくもなんともねえもんだけど
山育ちの染花にしてみれば、いつまで見てても飽きねえみたいで
単調な波の繰り返しも、染花にとっては楽しい遊びみたいなもんだった

あの日から
俺はなんにも聞かねえ
染花もなんにも言わねえ
ただこうして目の前で染花が笑ってる
その現実があればそれだけでよかった

「染花」
「はい」

俺が呼べば、素直に答える
手招きすれば、躊躇うことなく駆けてくる
それは、かつてこの目で見ていた光景にどこか似ていて、俺は苦笑する

「桂さま」

夏の終わり
染花の白い頬が赤く染まる
水平線に沈みゆく夕陽に背を向けながら、俺は染花にそっと口づけを落とした

*だから桂 じれったすぎるよキミww

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~ Comment ~

NoTitle 

タイトルをどうしてもひょっこりひょうたん島のノリで読んじゃうのは、まあ置いといて。

ほんとじれったいねえw
ぐるぐる回ってる感じだ。

でね、私はこのシリーズを1から通して読み直してみたわけですよ

そしたら改めて気付いたよ。
じれったい、ぐるぐるしてるって思ってたけど、
ちゃんと少しずつ進展してるんだよねこの二人。
もどかしいと思っちゃうのは、丁寧に書いてあるからだった。
気付いて「やっぱりうさぴょんすごいなあ」と思った。

晴ちゃんの話読んでても思うけど、
こうやって細かくじっくり書ける人って本当に尊敬する。

んで初めて、「完結してから感想書くのもいいな」って思った。

アップされるたびに感想書いた方が、きっと書き手さんには嬉しいだろうし励みになるんだろうけど。
でも読み手としては、通して読んでから思ったことを伝える方を選ぶ人もいるよね。
そういうの気持ち初めて理解出来たわ。
勉強になった!

ぐりんたん 

コメントありがとー!

>タイトルをどうしてもひょっこりひょうたん島のノリで読んじゃうのは、まあ置いといて。

置いとくんかいw

>じれったい、ぐるぐるしてるって思ってたけど、
>ちゃんと少しずつ進展してるんだよねこの二人。

気づいてくれてありがとー!!
そーなのよ
あまりのスローペースに騙されがちだけど
ほんとにちょっとずつ進展はしてるのよ!

>もどかしいと思っちゃうのは、丁寧に書いてあるからだった。

丁寧というかね
桂ってば、この頃はあんまり派手な動きがない人なんだよね・・・
だから日々のやりとりを書くしかないんだけどさー
「いつの間にか二人は惹かれあっていた」って文章だけでは
なんかやなの(笑)

高杉みたいにアグレッシブだと書きやすいんだけどねえ

>んで初めて、「完結してから感想書くのもいいな」って思った。

これ、わかるなあ
や、話にもよるんだけどさ
ぐりんたんが言ってるみたいにさ
書き手と読み手じゃ、なんての?違うよね
書いてるほうとしてはさ、そのたびに感想欲しいって思うのよ正直
けど読んでるときはさ
じっくり最後まで読んで、ふわああ・・・・(欠伸ではない)って気持ちをぶつけたいって思うのよねー

わたしもぐりんたんに言われて初めて気づいたよ
ありがとう!

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