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「薄桜鬼 土方歳三」
恋するふたり(短編)

あまつ空なる人を想ふ

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遠くで雷鳴が響いた
見上げれば空は一面の雲に覆われていて

雪になるか

土方は静かに筆を置いた

もともと天候の変化には敏いほうだったが
この北の大地へ来てからというもの
空を読むことは日々の習慣になってしまった
江戸や京と違い、北の空はあっという間に姿を変える
しかもこの季節だ
雪が降り始めると 周囲はみるみるうちに白い迷路だ

岬まで偵察に行った部隊もそろそろ戻ってくるだろう
戦略の練り直しは、報告を聞いてからだ

凝り固まった体を解すように、土方は大きく腕を上げる
首を回すと、肩にわずかな痛みが走った

疲れたとか、だるいとか
ここに来てからそんな言葉は一度も口にしたことはない
誰が聞いているかわからないし、部隊を率いる長が泣き言を言えば士気が下がる
とはいうものの、やはり疲労していることは事実だった

職務の多さというなら、それは京にいた頃と大差はない気がする
むしろ京での方が仕事は多岐に渡っていて、それこそ眠る暇などなかった
少なくともここでは、京で頭を悩ませた資金繰りなどは土方の手からは離れていて
それだけでも荷は楽になっているはずだ

なのにこの疲労感はなんだろう

確かに神経が過敏になっているという自覚はある
冬が過ぎ春が来れば、戦いの幕があがることは目に見えていた
それが、やり直しのできるものではないこともわかっている
始まればあとは終焉に向かって走るだけだ
むろん簡単に勝てるなどとは微塵も思っていない
けれど最初から負けるつもりで挑む気もない

相手を倒し、自分が生き残ってこその勝利だ

そう言ったのは誰だったか
いつ、どこでその言葉を聞いたのか
いや、そもそも本当に誰かから聞いた言葉なのかさえもうろ覚えだ
だがこの言葉は、土方の心に深く刻み込まれている

己の命を賭してでもとか、死ぬことなど恐れないとか
確かに聞こえはいい言葉だが、それは現実がともなってこそ意味がある
命を懸けて、なのに目的を達することができなければ
それは自己満足にしかならない

目的はなんだ

いつだって、それが土方の行動原理だ
感情も理屈も計算も
すべては目的を完遂するための手段であり、方法にしか過ぎなくて
そこに自我など必要ない

それがもともとの気性というわけではない
どちらかといえば短気で感情的で 理屈よりは行動で
ぐだぐだと能書きを言う前にさっさとやってしまえという人間だ

そう思っていたんだがな

ちらちらと
窓の向こうに舞い始めた雪に土方は目を細める
ふと脳裏に浮かんだのは、遠い日の思い出

その年 ひと晩降り続いた雪は、朝には辺りを銀色に染めていて
寒さも冷たさもものともせず、裸足に草履をつっかけただけの格好で
庭に積もった雪に目を輝かせていた少女
器用に雪でうさぎを作り 容赦なく飛んでくる雪玉に悲鳴をあげ
うるせえっと一喝され 蜘蛛の子を散らすように逃げる連中の盾にされて

それでもおまえは笑ってたっけな

あの頃も冬は寒かった 雪は冷たかった
なのに 心は温もりを感じていたように思うのはなぜだろう

後悔はしていない
あの選択は間違いではなかったと 今でもそう思っている
死なせるわけにはいかない
こんな男の傍で 無為な死を遂げるような真似は断じてさせてはいけないと
心からそう思った

けれど

窓の外に広がる灰色の空に
どこか悲しげな娘の顔が見えるような気がして
土方は苦い笑みを浮かべてみせた

*幸せな土千が書けねえのはなぜだw


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~ Comment ~

 

雷鳴から雪っていうのが、新鮮に感じたよ。
調べてみたら「雪下ろしの雷」なんて言葉もあるんだねー。
勉強になった!

ぐりんたん 

読んでくれてありがとー!

そうなんだよね
雪の少ない地方じゃ珍しいんだけど
北国では『雪おこし』って言葉があるんだってさ
初めてこの言葉を聞いたのは
「悪魔の花嫁」ってマンガのセリフだったw

なんかさ
どーしても副長=蝦夷にしかならねえだよ最近・・・
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