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「薄桜鬼 土方歳三」
恋するふたり(短編)

揺れる髪に

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わずかに開いた障子戸の隙間から漂う香りに手を止めた

初めてではない 確かにこの香りは知っている
けれど なんの香りだったか思い出せない

花?それとも焚き染めた香?

そのどちらでもあるようにも思えるが
はっきりとはわからない

強い匂いではない
どちらかと言えば控えめな それでいて忘れがたいような不思議な匂いに
まるで誘われるかのように腰をあげる

縁側に出ると 真冬の凍てつく風が足元を浚ってゆく
その冷たさに思わず顔を顰め 袂の中で腕を組むが
視線の先に動く姿に 苦笑いしながら袖から手を出した

火鉢で温められた部屋にいる自分が寒がってどうする
この寒い中 素足で水仕事をしている奴もいるってのに

ほどほどでいいと何度も言った
そんなに毎日廊下を拭く必要もないとも告げた
けれどあの娘はにこにこ笑ってこう返したのだ

これがわたしの役目ですから
皆さんも寒いからと言ってお役目に手を抜くことはないでしょう?

やられた、と思った
返す言葉がなかった
それからあの娘のやることには口を出さないようになったけれど

頃合を見計らって娘が運んでくる茶を
暑い日は 風の通る縁側で
寒い日は 暖かい部屋の中で
ともに啜るのが日課になった

少しは休んでくださいという娘の言い分を聞き入れたのだが
それで娘を労うことができるのならという気持ちがなかったと言い切れない自分がいる

ああ この匂いか

風が運んできた香りの元に気付き 目を細めた
廊下をせっせと水拭きしている娘の背で
ひとつに結い上げた髪が揺れていた


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~ Comment ~

NoTitle 

アップありがとう!

私今、若干病んでてさ。
(ごめんねしつこくて)
だからうさぴょんのお話が本当に癒し。
それこそ実家みたいな!
ありがとね!

これさ、すんごくいい話だと思ったの。
この香りは、千鶴の香りだよね。
最初はお茶の香りかな?とか思ったんだけど。
違ったらごめん。

なんていったらいいのかしら。

これが何の香りか、とかそういう話の前に。
土方の心にその香りがすっかりなじんでしまっている、っていうのが良い!
感情が湧く前に、なんつーか体の奥に染み込んでるというか。
それってすごく土千だなって!

>苦笑いしながら袖から手を出した
>自分が寒がってどうする

こう思うところが、やっぱり土方だなって思う。
まずは自分を律するのが当たり前って感じでさ。
萌えじゃなくて、でも胸にぐっとくるものがある!

>皆さんも寒いからと言ってお役目に手を抜くことはないでしょう?

千鶴だーー
良い千鶴。
おばかじゃない、ちゃんとした千鶴w

土方もさ。
もし千鶴を軽んじてたとしたら、
たとえ彼女が上記の台詞を吐いても「うるせえ、お前は部屋にいりゃいいんだ」くらい言いそうじゃん。
でも「やられた」って思うあたり、千鶴のこと認めているんだなって思った。

この二人はこれがいいんだよね。
甘さはないけど、敬意に溢れたやり取り。

揺れる髪にというタイトルが、また素敵なのー!

凛とした気分になるお話だったよ、ありがとね!

ぐりんたん 

>だからうさぴょんのお話が本当に癒し。
>それこそ実家みたいな!

そういってもらえると嬉しい!
癒しにならない話も書いてしまう私を温かく見つめてねっ

>この香りは、千鶴の香りだよね。

ですです!正解!
別にお香をたきしめてるとか、そういう意味じゃなく
なんとなく「その人の香」ってあるじゃん?
体臭っていうとおっさんくさいけどさw

>土方の心にその香りがすっかりなじんでしまっている、っていうのが良い!

ありがとう!
まさにそれです!
香りってさ、五感の中で一番「記憶」を呼び覚ます感覚だと思うのね
それが心に染みこんでる、そんな二人です

>この二人はこれがいいんだよね。
>甘さはないけど、敬意に溢れたやり取り。

そういってもらえると嬉しい!
土千はどうしても甘くならねえんだよねえ・・・
ここまでが限界だあ!!
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