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「薄桜鬼 土方歳三」
恋するふたり(短編)

あれは貴方の声だった

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*ぐりんたんから頂いた「傍に、いてあげて」(仮題)へのお返しです♪

あのとき 確かに声が聞こえた
あれは あの人の声だった


「あの時はすまなかったな」

突然の夫からの謝罪に、千鶴は目をぱちくりとさせた
夕餉も済ませ あとはもう寝るだけとなった夜更けのこと
赤々と燃える囲炉裏の火が 壁に二人の濃い影を映し出す

「あの、あの時って」

夫がなんのことを言っているのか
千鶴には見当もつかない
ほんの今まで 今日は寒かった 明日はどうだろうなどと他愛ない話をしていたのに
まさか天気のことで夫が謝らねばならぬはずもなく
何度も目を瞬かせる千鶴に 土方は苦笑する

「・・・仙台でのことだ」
「あ・・・」

その一言で
夫が何を言っているのか 千鶴はすぐに理解することができた
あの日からもう何年も経ったが はっきりと覚えている
今では 良い思い出として昔語りができるほどになったけれど
あの時は絶望の淵に叩き落されたようなものだった

仙台で
土方は千鶴の手を振り払った
追いかけてくることを許さず
残酷なまでに冷たく拒絶した

「おまえを泣かせちまった」

まるでそれが罪であるかのように 土方はその秀麗な顔を歪める
後悔や反省は嫌いだと言い切る土方にとっては あれは唯一の悔やむべきことなのかもしれない
千鶴はしばらく黙って夫を見つめていたが やがて両手をのばし夫の頬にそっと触れる

「あの時は・・・確かに悲しかったですけど」

土方は 静かに語る千鶴に目を落とす
白い頬が紅く染まっているのは 火のせいか

「でも今はこうして一緒にいられる。あれは、そのために必要なことだったんだって思ってます」
「千鶴」
「あの時はわたしもどうしていいかわからなくて、ほんとうにただ泣くばかりで」

懐かしさに目を細めながら 千鶴は愛しい夫の頬を掌で撫でる

この温もりにこうして触れることができるのは
あのとき
絶望の淵に立っていたあのとき

-あの人が背中をおしてくれたから

泣き崩れる背中に感じたのは 冷たい掌
だけど それは心に沁みるほど温かく
耳に届いた音は 昔とかわらぬどこか悪戯めいた声
けれど 包み込むような優しさが溢れていて

「・・・幸せです、わたし」

あの時 心に感じたあの言葉が
わたしの背中をおしてくれた

だから今
こうして貴方の傍にいられる
こうして貴方に触れることができる

あれは あの人の声だった
あの人は確かにこう言った

傍に、いてあげて 

ぱちぱちと
燃える炎が音を立てる
紫紺の目の中で 千鶴が微笑む

「幸せです、わたし」

千鶴は同じ言葉をもう一度繰り返す
夫にむけて

そして
なつかしい彼の人にむけて


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~ Comment ~

 

うわーん!お返しもらえるなんて思ってもいなかったから嬉しいよー!
ありがとー!

読んでたら泣けてきたよ。
千鶴の背中をそっと押した総司。
最後の「彼の人」にうるっとした。

あと、土方の唯一つの後悔ってのがズキっときた。
そうだと思う!
新選組に関しては何も後悔してないと思うんだ。
でも千鶴に関してはね。
幸せに暮らしてる今でも、思い出すと苦いんだろうな。

また書きにくるねー!

プレイしてから1年以上経ってるのに、なんなんだろうこの薄桜鬼愛!

 

この、うさぎさんグリンさんの共同三部作、すごい胸にきた!
薄桜鬼、やってないから的外れかもだけど。
でもなんだろう、この3人の絆っていうか、なんかね。
とにかく、胸にぐーっときたの。

はぁ、いいお話をありがとうです!

 

姐たんアップありがっちゅ☆

ぐりんたんと姐たんの連作読んでたらさ。
またあの切な苦しい土方ルートをやりたくなってしまったよ。
ゲーム・アニメ・映画、基本の筋は同じなんだけれど、全部違う別れ方になってるんだよね。
映画のだったかな。
千鶴に手紙を残して北へ向かう副長のさ、その手紙の内容が切ないのよ。
すっごく他人行儀に丁寧な言葉で書かれてて突き放す内容なのに、そこには千鶴を思う優しさしかないの。
函館の敗戦の時まで、副長は新選組を一番に考えて行動してるんだよ。
でもその後は千鶴を一番に考えてるのよね。
きっと根底の部分では新選組が一番なんだとは思うけれど、残りの時間は千鶴の為にっていう副長の想いが、仙台での事に後悔を余計残してしまうんだろうなぁ。
後日談的な創作を色んなサイトで読んだけれど、総司の想いと千鶴をこういう形で絡めてグッとくるお話になってるのは、こちら《うさぎの夢》さんが一番だよ。
ぐりんたんの沖千愛と姐たんの愛の結晶だ!
よかった!
よかったよ、姐たん!!
薄桜鬼だった!!





ぐりんたん&晴たん&あーやん 

コメントありがとう!

◇ぐりんたん

>お返しもらえるなんて思ってもいなかったから嬉しいよー!

お返しというか、ぐりんたんのお話読んでおりてきたのよー!
こちらこそありがとうなの!

>千鶴の背中をそっと押した総司。

ぐりんたんの意図とは違ったかもしれないけど
わたしはそう解釈しました

>でも千鶴に関してはね。
>幸せに暮らしてる今でも、思い出すと苦いんだろうな。

短編なのでサラッと書いちゃったけど
千鶴を仙台に残して来たこと自体は、土方はもしかしたら後悔はしてないかもしれない
あの時は、それが最良の選択だったはずだから
でも「千鶴を泣かせてしまった」「つらい想いをさせてしまった」ってことは悔んでるかもしれないなって思う今日この頃
上手く言えないんだけどw

>プレイしてから1年以上経ってるのに、なんなんだろうこの薄桜鬼愛!

わかるー!
時々やろうかなって思うんだけどさ
あの長さを最初から始める根性がないw

◇あーやん

>うさぎさんグリンさんの共同三部作、すごい胸にきた!

おお!共同三部作!
そう言ってもらえて嬉しい!

>でもなんだろう、この3人の絆っていうか、なんかね。
>とにかく、胸にぐーっときたの。

ありがとう!
薄桜鬼をやってないからこそ、あーやんがそう感じてくれることが嬉しい!
だって、知らない人にも伝わってるってことだから
書き手冥利につきます!
ありがとうね!

◇晴たん

>あの切な苦しい土方ルートをやりたくなってしまったよ。

わかる!
土方ルートはほんとに長いしつらいしせつないし。
でも惹かれるルートなんだよね

>ゲーム・アニメ・映画、基本の筋は同じなんだけれど、全部違う別れ方になってるんだよね。

みたいだね!
わたしはアニメ・映画はまともに観てないのよ
いろんなサイトで情報として知ってるだけさー

>他人行儀に丁寧な言葉で書かれてて突き放す内容なのに、そこには千鶴を思う優しさしかないの。

そうなんだね
ううう・・・・副長・・・・!!
やっぱ副長はいい男だ!

>総司の想いと千鶴をこういう形で絡めてグッとくるお話になってるのは、こちら《うさぎの夢》さんが一番だよ。

ありがとう!
でもこの「連作」は、ぐりんたんのお話があってこそ出来たものだから!
ありがとうぐりんたん! 

>ぐりんたんの沖千愛と姐たんの愛の結晶だ!

沖千愛ww

>薄桜鬼だった!!

うわあ・・
なんか嬉しい!

NoTitle 

あらためましてー!

>でも「千鶴を泣かせてしまった」「つらい想いをさせてしまった」ってことは悔んでるかもしれないなって思う

分かる!きっとその通りだと思う!

>赤々と燃える囲炉裏の火が 壁に二人の濃い影を映し出す

この描写いいなあ。
冬の夜っぽいよね。
静かーーーな夜。

>やがて両手をのばし夫の頬にそっと触れる

ここ、鮮明に浮かんだ。
苦々しい顔をしてる土方をそっと包みこむんだよね。
うわぁぁぁ、いいなーーー。

>あれは、そのために必要なことだったんだって思ってます

この台詞もグッときたの。
本当にその通りだと思って。
うさぴょん、いつか言ってたじゃん。
どんな境遇も自分の選択の結果だ、って。
それを思い出す千鶴の台詞だった。

>冷たい掌
>だけど それは心に沁みるほど温かく

泣きそうになった…
手、冷たかったんだね。
だからどうこうというわけじゃなくて、
ああ総司の手はその時冷たかったのか、と思って。
でも温かみを感じたのか、千鶴は。
それだけでギュっとくる。胸が。

>「幸せです、わたし」

(T_T)
いいシーンだ。

たった一言なんだけど、それに全部凝縮されてる気がする。

副長×千鶴もホントいい二人だよね。


晴ちゃん

>ぐりんたんの沖千愛

ありがとうございますありがとうございます!!!

ぐりんたん 

コメントありがとー!

>冬の夜っぽいよね。
>静かーーーな夜。

なんかね
土千のED後って「冬」のイメージがあるんだよねえ
囲炉裏の前で二人が並んでる図

>どんな境遇も自分の選択の結果だ、って。
>それを思い出す千鶴の台詞だった。

まあ、私が言ってるのは結果論だけどねー
終わりよければすべてよし、じゃないけど
その渦中でもそう思えるほどまだ強くはないなあ

>手、冷たかったんだね。

実際に総司の手が触れたわけじゃないんだけど
「温かい」よりは「冷たい」のではないかと
でも、それは冷たい冷たさじゃなく(・・・どんな表現w)
温かい冷たさなのー
伝わるといいんだけど!

>副長×千鶴もホントいい二人だよね。

土千は私の原点!・・・のはずなのだが
なぜか話の数は少ないw

初心にかえって頑張ってみようと思う今日この頃


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