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「薄桜鬼 沖田総司」
総司の恋物語(リクエスト企画)

総司の恋物語18-君と出会って恋を知った-

 ←六 あの人がお前の名を呼ぶ ただそれだけのことが →ずっと貴方を見ていた-ある女の回想-

草双紙を書くことが夢だった。
自分が書いた草双紙をたくさんの人に読んでもらいたいと思っていた。
京の草双紙の師匠に弟子入りしたいと願っていた。
けれど、故郷には病弱な母と幼い弟妹がいて。自分が養っていかねばならない状態で。
一度は諦めようと思った。このまま故郷で生きていこうと。

なのに、母は許してくれた。
嫁入りするまでなら、という条件付だったけれど、京に出ることを認めてくれた。

楽しかった。
草双紙を書き、お師匠さんに習い。
奉公の合間に、それこそ寝る間も惜しんで書き続けていた。

奉公先に出入りしていた問屋の若衆に見初められた。
人柄もよく、誰が見ても好印象の青年で。
郷里の母と弟妹たちの面倒も自分が看るとまで言ってくれて。
奉公先の主人も喜んで祝ってくれ、とんとん拍子に話が進んだ。
なんの問題もない縁談だった。

ただひとつ。
自分の気持ち以外は。



もう会わない。

短く告げられた言葉に、私は何も答えられなかった。
ただ涙が溢れてきて、それでも声をあげて泣くことはできなかった。

そんなことをしたらあなたが困ってしまうことがわかっていたから。

あなたには大切な役目があって。
そのために京に出てきたんだと、目を輝かせて語るあなたが好きだった。

でも。
私が傍にいれば、優しいあなたはきっと私を守ろうとする。
でもそれは、あなたから大切なものを奪ってしまうことになる。

あなたには、自分の夢を追いかけてほしい。
自分の信じた道を迷うことなくまっすぐに。

だから。
あなたとはもう会わない。

あなたのことが大好きだから。



山崎から話を聞いた。
あの日、着飾った君と一緒にいた男が誰なのか。
なぜ土方さんがあんなことを言ったのか。
その答えがそこにあった。

それでも、僕は君と離れることなんか考えられなくて。

でも。
僕の傍にいれば、また君は危険な目にあうかもしれない。
それがわかっていても。
僕は、ずっと君だけの傍にいることはできない。
君だけを守ってあげることは僕にはできないから。

君には穏やかで優しい日々を過ごしてほしい。
血生臭さとは無縁の、健やかな日々を。

だからこそ。
君とはもう会わない。

君の幸せを願うなら。
それが僕が君にしてあげられる唯一のことだから。


もう会わない。

短い一言。
それ以上、僕は何も言わなかった。
黙って僕を見つめる君の目には、涙が溢れていて。
小さな肩は震えていて。

その涙をこの手で拭いたかった。
震える肩を思いきり抱きしめたかった。

けど。
僕はそんな衝動をぐっと堪える。
僕に君を抱きしめる資格なんか、ない。


元気でね。
そう告げて、総司は背を向ける。
一度も振り返ることなく遠ざかってゆくその背中を少女はただ黙って見つめ続けていた。



珍しく晴れた冬の午後。
巡察途中だった一番組組長はふと足を止めた。
彼の背後で、隊士たちが訝しげにその視線の先を追う。

白い綿帽子を纏った一人の娘。傍らには穏やかに微笑む青年の姿。
どこかの店子の嫁入りなのだろう。店の主人と見られる男が嬉しげに若い二人を見守っている。
さほど盛大ではないが、誰もが顔をほころばせるような、そんな優しい光景がそこにあった。

「-あの、組長?」

ありふれた嫁入り行列。それをどこか眩しげに目を細めて見つめる組長に、隊士の一人が声をかけた。
同時に、通りの先で騒ぎが起きていることに気づいた別の隊士が声をあげる。

「組長、あそこで騒ぎが。」

ようやく組長は視線を動かした。隊士の指差す方向を見て、やれやれと肩をすくめる。

「-まったく。しょうがないよね。お仕事行こっか。」

軽い口調でそう言うと、彼はくるりと踵を返した。
季節はずれの青い空の下、浅葱色の羽織がふわりと揺れた。


君と出逢って、人を好きになる気持ちを知った。
こんなにも大切に思える相手と巡り合えたことが僕は嬉しい。
だからどうか。

どうか幸せに。
誰よりも幸せに。


-総司の恋物語- 完




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~ Comment ~

 

お、終わっちゃった…。。。
ぐ、グリーンさん、だ、だ大丈夫ですかっ??

 

いいの、分かってた。

読んでまず思ったことが「どうしよう、綿帽子が一気に嫌いになってしまった」だったw
どうせもう結婚式挙げることないしどうでもいいけど。

ちょっと感想には時間かかるかもしんない…

最後の、晴れた空の下で翻る羽織がね。
もう鮮明に刻み込まれた。
忘れられないわこれ。

あーやんさん 

うわあああああん!あーやんさんの一言でなんか決壊したー!!
大丈夫じゃないです!全然大丈夫じゃないんですー!!
。・゜・(ノД`)・゜・。(T_T)(T_T)(;_;)(つД`)ノ

あーやんさん&グリーンさん 

アップ早々、コメントありがとうございます!

・・・・え~と(汗)
いやだからあの。

だって。

>大丈夫じゃないです!全然大丈夫じゃないんですー!!
>。・゜・(ノД`)・゜・。(T_T)(T_T)(;_;)(つД`)ノ

返信に困るわっ(笑)


 

いやーだってさー
冷静に冷静に。落ち着け私これは小説。
って思ってたんだけどさー
あーやんさんのコメント読んだら「やっぱダメだー!!(つД`)ノ」ってw

泣けるでしょこれ。泣くしかないでしょう!
すでに何回か読み返してるけど(そして今、入社以来本当に遅刻寸前で焦っている)
もう何とも言えない気持ちが込み上げるー!!

でもありがとううさぎさん!
すごく嬉しかった!
一時の夢でした(私にとって)

 

ではでは!
遅刻寸前で汗だくで走ったら、わりとスッキリした!w

この子、夢を追って京に出てきたんだね。
だから総司にとって新撰組と近藤がどれだけ大事か、分かっちゃったんだね…

初恋ってなんでこんなに切ないんだろうなー
なのになんで優しい気持ちになれるんだろ。不思議。

恋に生きるなんてままならない世の中だったんだろうけど、
その中でもみんな、精一杯人を好きになったんだろうな…って…

総司ーーーーー!うわあああああん!!!。・゜・(ノД`)・゜・。

>君には穏やかで優しい日々を過ごしてほしい。

総司と過ごした短い時間こそ、穏やかで優しくて、その上きらきらしてたんだと思うよ。

>その涙をこの手で拭いたかった。
震える肩を思いきり抱きしめたかった。

泣けるよ…!!
ねえうさぎさん!泣けるってば!
(うさぎさんの肩を掴んで揺さぶるグリーン)
ああ!うさぎさんが泡吹いてしまったー!!

だめだ。あとでもっかい来るね。


  • #1285 グリーンっぽい人 
  • URL 
  • 2015.05/29 11:59 
  •  ▲EntryTop 

 

グリーンさん、なんかごめんなさい>_<
私が泣くキッカケを作ってしまったσ(^_^;)

そして改めましてうさぎさん、総司の恋物語完結、お疲れさまでした!
なんかね、すごーくすごーく、感動しました。
切なかったけど、でも、すごく綺麗な終わり方で。
あぁ、こんな陳腐な言葉じゃ伝わらないんですけど。

どっちも想い合ってるのに、想い合ってるからこそ身を引く潔さと辛さ…。
やっぱり切ないですよね。
でも、これ以上ない純愛なのかも、とも思います。

沖田総司は近藤勇、新撰組、そして病のこともあるから、敢えて大事なものを作らないようにしてるのかな、って思うところがあるんですけど、こうして彼女に出会って、人を愛する心を知れてよかったなぁって。

あぁ、もっと自分の気持ちをうさぎさんに伝えられる語彙力が欲しい…。

兎にも角にもうさぎさん!
素敵な物語をありがとうございました!!

あとは…グリーンさんの復活をお待ちしてます(o^^o)

NoTitle 

ふぅ。

自分のブログに書いたけど会社でちょっとショックなことがあって。
うさぎさんと野獣会の件でメール軽くやりとりした、直後ですよ。

だからちょっとテンションが変です。

さ、気を取り直して!!!
もう少し続き書きたいんだ♪

>もう会わない。

このキーワードで切り替わる二人の気持ちがもう、なんとも言い難い!!
まじめな話、好きな人がいるのに結婚しちゃっていいのかい?
ずっと引きずるぜ?
これ読んで思い出したんですよねー。(あ、本編から話それますw)
よく「結婚は二番目に好きな人と」っていうけど、私は少し反対派。
二番目だと、ちょっと挫折した時に逃げ道出来ちゃう気がしてさ。
長く暮らしてりゃ相手にイラつく瞬間なんて絶対あるわけで、
そこで「もしあの人と一緒になってたら…」なんて思いそう。

でもこのお話の総司と彼女はそんなこと思わないだろうけど。

きっと二人とも「決めた事だから」って、辛いことがあったとしても自分の選んだ道を歩いて行くんだろうね。

「もう会わない」って総司が言って、それに涙しながらも、自分からも「もう会わない」ってちゃんと決断した彼女に泣けるんだよね。
ちょっと何言ってるか分かんないかもしれないけどw

>なぜ土方さんがあんなことを言ったのか。

今私、すんげーーー土方に八つ当たりしたいwww
てめーのせいだ!と言いがかりをつけたい!!

>さほど盛大ではないが、誰もが顔をほころばせるような、そんな優しい光景がそこにあった。

この一文グッときた…
彼女、情熱は総司に置いて来たんだろうなって。
優しさとか穏やかさは、今の旦那さんと築いて行くんだろうけど。
でも、自分の身が危険に晒されても、それでも尚相手の無事だけを願うような、
そういう激しい感情は、総司だけの元に。みたいな。
妄想しすぎかなwごめんよーーーー!

>「-まったく。しょうがないよね。お仕事行こっか。」

ここでもう、ああこの話きれいに終わったな――って。
晴れ晴れと寂しい。

揺れる羽織と、

>どうか幸せに。
>誰よりも幸せに。

この台詞。
だから泣けるってばよー!
なんかもう、のめり込んでる自分が激しく鬱陶しいw

あーやんさんが純愛って書いてるの、すごく分かるなー。

最後はちょっと冷静に。
最終話、けっこうあっさり終わったねw
これはなんていうか、書き手としての感想。
でもだらだらするよりずっといい!!

気がついたら18話も書いてもらってたリクエスト企画。
本当に本当にありがとう!!!
すんごく嬉しかったの。
うさぎさんの愛を感じたのーー!

心から感謝!!

グリーンさん&あーやんさん 

改めまして、コメントありがとー!

◇あーやんさん

>切なかったけど、でも、すごく綺麗な終わり方で。

ありがとうございます!

>どっちも想い合ってるのに、想い合ってるからこそ身を引く潔さと辛さ…。
>これ以上ない純愛なのかも、とも思います。

ああ!!嬉しい!
そうなんです。この二人の純愛物語を描きたかったのー!!
最後についてはね、賛否両論だとは思うの。
「総司を忘れてとっとと結婚するんかい!」って思う方がいてもおかしくないし。

でも、このお話を描き始めた時から、実はこのラストは決めてたww
どこまでも透明できれいなお話を書きたかったんですけど、伝わってくれれば嬉しいです。

>あとは…グリーンさんの復活をお待ちしてます(o^^o)

大丈夫!
あの手この手で復活させてみせる!!

◇グリーンさん

>(うさぎさんの肩を掴んで揺さぶるグリーン)
>ああ!うさぎさんが泡吹いてしまったー!!

泡吹いて、おまけに呑んだ酒まで吐いて倒れたぞwww

いやいや、絶叫しながらもコメントいただき、ありがとうなの!

>よく「結婚は二番目に好きな人と」っていうけど、私は少し反対派。

私はどっち派でもないけれど。
でも実を言うと、結婚した相手はその時(結婚直前)一番好きだった人ではなかった(笑)
一番好きだった人とは結婚できない関係だったので(おいw)
結果的には「二番目に好きだった人」と結婚した。
で、別れたけど(爆)

そんなこたぁどーでもいいww

>彼女、情熱は総司に置いて来たんだろうなって。

まさにそうです!
グリーンさん、うまい表現するなあ・・・
「彼女」は燃え上がる情熱とか想いは、総司に捧げたんです!

結ばれることはなかった二人だけど、どっちも後悔はしてないの。
恋したことも、別れたことも。
きっとね、彼女はいつか草双紙に書くと思うの。
生涯一度の恋のことを。

>気がついたら18話も書いてもらってたリクエスト企画。
>本当に本当にありがとう!!!

グリーンさんの何気ない一言がきっかけで書き始めたお話でしたけど。
私自身も書いて良かった!って思ってます。
こちらこそありがとうです!!

あーやんさんにも返信したけど。
書き始めた時から、このラストは決めていて。
まあ、グリーンさんのことだから「こいつが書く話だから、絶対ハッピーエンドじゃねえよな」って予測はしてたと思うけど(笑)
でも、悲しいだけのお話にはしたくなかったのー
だから

>ここでもう、ああこの話きれいに終わったな――って。
晴れ晴れと寂しい。

これ、すっごく嬉しかったです!!
きれいに終わった、って感じてもらえたら最高に幸せだ!

>気がついたら18話も書いてもらってたリクエスト企画。
>本当に本当にありがとう!!

いや、ここまで長くなる予定ではなかったんだけどね(汗)

>最終話、けっこうあっさり終わったねw

うん。それは私も思ったww
もうちょっと書きたいこともあったんだけど、筆力が及ばなかったぜww

>うさぎさんの愛を感じたのーー!
>心から感謝!

こちらこそ!
お付き合いいただき、ありがとうございました!

さて、次は「禁断の桂の恋物語」か?(笑)

 

桂の恋物語…♡
1話でもいいからぜひ♡

あーやんさん 

ボソっと呟いててツボだー!
1話でもいいなんてそんな謙虚なこと言ってー(≧∇≦)
桂の話読んでみたいなあ♪

 

新参者ですみません。本当に感動しました、情景がありありと浮かび涙が止まらなくなりました。

佐藤さま 

ご訪問&コメントありがとうございます!

よくもまあ、こんな僻地のブログにお立ちよりいただき
また、身に余るようなコメントをいただいて感涙です!!

新参者なんてとんでもない!!
こうして来ていただけて本当に嬉しいです!!
遠慮なさらず、どーんとおいでくださいませ♪

総司の恋物語
お楽しみいただいたようでよかったですー!!
リクエスト企画ですので、本来の薄桜鬼とはちょっと違ってますし
薄桜鬼がお好きな方には不向きだったかもしません 汗

なのに、感動したと言っていただけて
こちらこそ感激です!

よろしければまた遊びにいらしてくださいね
コメントはもちろん
常にネタ切れであっぷあっぷしている管理人ですので
リクエストもご遠慮なくどうぞ!

本当にありがとうございました!

ありがとうございます! 

丁寧な御返事ありがとうございます!感激です!ゆっくりと作品を楽しませていただきますね。皆さんのコメントにも笑ったり涙ぐんだりしながら見ています(^^)

佐藤さま 

コメントありがとうございます!

>ゆっくりと作品を楽しませていただきます

うわあ・・・!嬉しいです!
量だけは大量にあるので お時間ある時にぼちぼちご覧になってくださいね♪

>皆さんのコメントにも笑ったり涙ぐんだりしながら見ています

これも嬉しい!
ウチはある意味無礼講のブログなので 汗
コメントの横レスがてんこもりww

そして遊びにきてくださる方たちはみなさん
気のいい方ばかりなので 本当にありがたいことです

よろしければ当ブログの「あなたの色に染められたい」コメント欄をのぞいてみてくださいねー
さっそく佐藤さんにご挨拶してる方が何名かおられます 笑

ご訪問ありがとうございました!
よろしければまたコメントお待ちしてますね―♪

今晩は~ 

楽しめました

たいへん面白かったです^^

フラメントさん 

ご訪問ありがとうございます!

思いきり捏造の沖田総司話ですが
楽しんでいただけたようでホッとしてます ←小心者w

またお越しくださいませね!
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